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■用語 遺伝性腎性尿崩症 [用語(い)]





[喫茶店]遺伝的な原因により、抗利尿ホルモンに腎臓が反応しないために多尿を示す疾患
 遺伝性腎性(じんせい)尿崩症とは、先天的な遺伝が原因で、抗利尿ホルモン(バソプレシン)に腎臓が反応しなくなることで、薄い尿が大量に排出される疾患。先天性腎性尿崩症、家族性腎性尿崩症とも呼ばれます。
 利尿を妨げる働きをする抗利尿ホルモンは、大脳の下部に位置する視床下部で合成され、神経連絡路を通って下垂体(脳下垂体)後葉に運ばれて貯蔵された後、血液中に放出されて腎臓に作用し尿の量を調節します。遺伝性腎性尿崩症では、利尿を妨げる働きをする抗利尿ホルモンの分泌は正常でも、腎尿細管における作用障害に由来して腎臓が反応しなくなり、体内への水分の再吸収が低下するために、尿の濃縮障害が引き起こされ、水分が過剰に尿として排出されます。
 一方、利尿を妨げる働きをする抗利尿ホルモンの分泌量の低下で、体内への水分の再吸収が低下するために、水分が過剰に尿として排出される疾患は、遺伝性ないし後天性の中枢性尿崩症です。
 腎性尿崩症にも遺伝性と後天性があり、遺伝性腎性尿崩症が先天的な遺伝が原因で、出生直後から症状が出現することが多いのに対して、後天性腎性尿崩症は薬剤の副作用や腎臓障害などが原因となって、あらゆる年代において徐々にあるいは突然、症状が出現します。
 遺伝性腎性尿崩症は、腎臓の腎尿細管の抗利尿ホルモン2型受容体の遺伝子異常で90パーセント以上が出現するとされ、性染色体であるX染色体の劣性遺伝のため、男性にのみに発症します。X染色体を2本持つ女性は、発症しないものの保因者になるため、妊娠した場合、遺伝性腎性尿崩症を受け継ぐ男子が生まれる可能性があります。
 また、まれに尿細管の抗利尿ホルモン感受性アクアポリン(水チャンネル)の遺伝子異常によっても出現します。この遺伝子異常は、常染色体の劣性遺伝によって約9パーセントで発症し、常染色体の優性遺伝によって1パーセントで発症します。
 遺伝性腎性尿崩症を胎児期に発症した場合は、母胎の中で大量に尿を排出するため羊水が多くなります。
 生後数日からの新生児期に発症した場合は、1日2・5リットルから3リットル以上の著しい多尿、のどの渇きによる多飲を示し、夜間尿の増加などが起こります。
 大多数の新生児は生後1年以内に診断されますが、未治療の新生児では、のどの渇きを訴えることができないため、保護者が水の補給を控えた場合や高温環境にさらされた場合には、激しい脱水による発熱と嘔吐(おうと)、けいれんを起こし、血液中のナトリウム値が上昇します。この高ナトリウム血症が起こると、脳が障害され、発達障害や精神遅滞を起こしてしまう可能性があります。
 通常、低身長がみられ、慢性的で過大な多尿に伴い、水腎症や水尿管症、巨大膀胱(ぼうこう)など尿路系の拡張が発生し、その結果、逆流性腎症さらに腎不全に至る例もあります。
 しかし、一部の軽症型(部分型)の遺伝性腎性尿崩症の新生児では、これらの症状は気付かれない程度か、軽度です。明らかな脱水の症状を示さずに、嘔吐、吐き気、授乳力低下、便秘もしくは下痢、発育不全、原因不明の発熱、不活発、興奮性といった症状を現します。低身長や発達障害はみられず、小児期の後期に診断される傾向があります。
 常染色体優性遺伝によって遺伝性腎性尿崩症を発症した新生児では、症状の出現は遅く、成人初期まで現れない場合もあります。
 早期に診断された場合も、遺伝性腎性尿崩症を根治できる治療法がないため、長期にわたって飲水とトイレの使用が自由にできる状況を用意することが必要になります。乳児では自分ののどの渇きに従って水を求めることができないので、通常の食事のほかに水を摂取させることが必要です。
 自分で水を求めることができる小児期になっても、こまめな水分補給を常に行いながらの生活となります。そのぶん尿量も増えますので、トイレに行く回数もほかの人よりも圧倒的に増え、生活は大きく影響を受け、幼稚園生活、学校生活や、成人後の社会活動、グループ活動も障害されます。
[喫茶店]遺伝性腎性尿崩症の検査と診断と治療 
 内科、内分泌科の医師による診断では、下垂体(脳下垂体)に由来する抗利尿ホルモンが存在するにもかかわらず、血漿(けっしょう)抗利尿ホルモン濃度が高く、かつ利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤やデスモプレシン剤を投与しても尿の濃縮ができないことによって、遺伝性腎性尿崩症と確定します。
 内科、内分泌科の医師による治療では、遺伝性腎性尿崩症を根治できる治療法がないため、経験的に対症療法として、尿量を減らす目的で、抗利尿ホルモンの産生を刺激するサイアザイド系(チアジド系)利尿薬、それに加えてインドメタシンなどの非ステロイド系抗炎症薬を使用しますが、十分な効果は得られていません。
 サイアザイド系(チアジド系)利尿薬を使用すると、カリウム喪失を招くため、血清カリウム濃度を測定し、必要に応じて食事や薬剤の形で補充します。水腎症、水尿管症、巨大膀胱に対しては、尿量を減らす治療を行い、残尿が多量の場合には周期的もしくは持続的な膀胱カテーテル留置を行います。
 また、長期の療養が必要なため、塩分制限の食事療法を行うとともに、腎臓障害、高度脱水、高ナトリウム血症を起こさないように長期的な経過観察を続けます。
 軽症型(部分型)の遺伝性腎性尿崩症では、利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤や、デスモプレシン剤を使用した治療によって、ある程度尿量を減少させることが可能です。




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■用語 陰茎重複症 [用語(い)]





[2]男児が2本の陰茎を持って生まれる先天性疾患
 陰茎重複症とは、男児が2本の陰茎を持って生まれる先天性疾患。二陰茎体とも呼ばれます。
 極めてまれな先天性障害であり、最古の記録は、1609年にスイス人医師のヨハネス・ヤコブ・ウェッカーが残した「イタリアのボローニャで2つのペニスを持つ男性の遺体を確認した」というもの。アメリカにおいては、550万人に1人の発生率とされています。
 妊娠23日目から25日目の胎児において、生殖結節、および直腸から胎児中胚葉(ちゅうはいよう)の尾部細胞塊が尿生殖洞として分離し、最終的に陰茎を形成する過程で、体節構造を決定する遺伝子群であるホメオティック遺伝子の変異による異常形成、損傷、ストレスなどの影響により、陰茎重複症が発症すると考えられています。
 陰茎が2つに分かれているだけのものから、互いに少し離れた位置に同じ大きさの2本の陰茎がそれぞれ左右を向く形で独立して存在するもの、際立って大きさの違う2本の陰茎が独立して存在するもの、通常の1本の陰茎の上に小さな1本の陰茎がついているものなど、多岐にわたる陰茎重複症の例があります。
 排尿は、両方の陰茎から可能な場合もあれば、片方からのみ可能な場合もあり、会陰(えいん)の開口部からのみ可能な場合もあります。
 長じてからの射精は、ほとんどは片方の陰茎からのみ可能ですが、両方の陰茎から可能な場合、2本の陰茎が完全に独立して機能し、一方で排尿しつつ、もう一方で射精することも可能な場合もあります。
 陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしていて、男性ホルモンおよび精子を産生している睾丸(こうがん)、すなわち精巣は、2組4個ではなく、1組2個存在します。
 陰茎重複症や、これに関連する疾患を持って生まれた男児は、しばしば腎臓(じんぞう)、脊椎(せきつい)、肛門(こうもん)および直腸の先天性重複異常による複雑な内臓構成を持つため、これらの臓器と関連する種々の感染症により死亡する率が高くなっています。
 また、先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害である二分脊椎(にぶんせきつい)症、脳脊髄液による脳の圧迫が脳機能に影響を与える水頭(すいとう)症を合併することもあります。
 生まれた男児に二分脊椎が発生している場合、二分脊椎の発生部位から下の神経がまひして、両下肢の歩行障害や運動障害、感覚低下が起こるほか、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして排尿・排便障害、性機能障害が起こることもあります。脊椎骨の奇形の程度が強く位置が高いほど、多彩な神経症状を示し、障害が重くなります。
 多くは、水頭症を合併しているほか、脳の奇形の一種であるキアリ奇形、嚥下(えんげ)障害、脊椎側湾、脊椎後湾、脊髄空洞症を合併することもあります。
 陰茎重複症を発症して長じた人は、ほかの先天性疾患を合併したり、性交渉の困難さから、子供を残せない例が多く認められます。中には、女性のパートナーとの間に子供をもうけている人もいます。
 この陰茎重複症の父親を持って生まれた男児の多くは、通常の陰茎を持っています。
 陰茎重複症の男児の多くは、今後の人生を考慮し、小児外科、外科などの医師により、生まれた時や幼少時に2本の陰茎を1本に接合する手術、あるいは2本の陰茎のうちの1本を切除する手術を受けています。




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■用語 陰茎欠損症 [用語(い)]





[トイレ]遺伝子的には男性形質でありながら、生まれながらに陰茎を所有しない疾患
 陰茎欠損症とは、遺伝的には男性でありながら、生まれ付き陰茎を所有しない疾患。無陰茎症とも呼ばれます。
 1000万人から3000万人の男児出生に対して1人の発症頻度といわれており、尿路性器系先天奇形の中でも極めてまれな疾患に相当します。染色体は男性型を示す46XYであり、男性の外性器のうち陰茎は根部から欠損して隆起もみられませんが、ほとんどが陰嚢(いんのう)を所有しています。
 性交と排尿という2つの機能を果たす陰茎の発生は、胎生4週目に排泄腔(はいせつくう)膜の頭側に出現する生殖結節に由来します。生殖結節は伸長し、胎生12週目くらいに生殖茎になり、最終的には陰茎の亀頭を形成します。この際、尿生殖ひだと尿道溝が生殖結節に導かれるようにして、陰茎海綿体と陰茎部尿道を形成します。この生殖結節の先天的な無形成、もしくは極端な低形成が、陰茎欠損症の原因と考えられます。
 また、陰茎欠損症は、腎臓(じんぞう)、膀胱(ぼうこう)などの無形成、低形成などの尿路奇形を高頻度に合併することが知られています。
 尿道の開口部によって、尿道が外尿道括約筋より遠位の肛門(こうもん)部近辺に開口しているタイプ1、尿道が外尿道括約筋より近位に開口しているタイプ2、尿道無形成のタイプ3に、陰茎欠損症は分類されます。
 尿路奇形の合併率は、タイプ1が63パーセント、タイプ2が64パーセント、タイプ3が100パーセントであり、それぞれの生存率は、87パーセント、64パーセント、0パーセントであるというデータがあります。タイプ3は、排泄腔の発生異常に伴った生殖結節の形成異常と考えられます。
 ほかにも、陰茎欠損症は、精巣( 睾丸〔こうがん〕)、精巣上体(副睾丸)、精管、精嚢(せいのう)、前立腺(せん)、尿道球腺(カウパー腺)などの男性の内性器の形質異常を合併していることが多く、停留精巣の合併も高頻度に認められます。
 停留精巣は、男児の精巣の下降が不十分で、精巣が陰嚢内に位置せずに、途中でとどまっている状態。
 性腺に相当する精巣は本来、妊娠3カ月ごろから9カ月ごろまでの胎児期に、腹腔の腎臓に近いところから次第に下降し、鼠径管(そけいかん)という下腹部の決まった道を通ってから陰嚢まで下降し、出生時には陰嚢内に位置するようになります。陰嚢からの牽引(けんいん)、ホルモン(内分泌)などの働きにより精巣は下降しますが、何らかの原因によって下降が途中で止まったものが停留精巣です。
 片側性と両側性があり、多くは股(また)の付け根の鼠径部に精巣を触れることができます。生後3カ月ごろまでは精巣の自然下降が期待できますが、1歳を過ぎると精巣の自然下降はほとんど期待できません。
 陰嚢の中に精巣がある場合に比べ、それ以外のところに精巣がある場合は、2〜4度高い温度環境にさらされていることになります。陰嚢内にあると33度、鼠径管内にあると35度、腹腔内にあると37度というデータもあります。
 高い温度環境にある停留精巣を放置しておくと、精巣は徐々に委縮してしまいます。精子を作る細胞も少しずつ機能を失い、数も減少してゆきます。この変化は高い温度環境では常に進行してゆき、成人になってからの男性不妊の原因になると考えられています。
 さらに、停留精巣から悪性腫瘍(しゅよう)ができやすい、停留精巣が外傷を受けやすく、精巣捻転(ねんてん)を起こしやすいなどともいわれます。
 陰茎欠損症は、出生時に医師や看護師によって発見されることが多く、一般的には小児科、泌尿器科、小児外科などに転科、入院となります。
[トイレ]陰茎欠損症の検査と診断と治療
 小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診断は、形態上比較的容易ですが、鑑別する疾患として陰茎発育不全(ミクロペニス)、埋没陰茎、尿道下裂、半陰陽などがあります。
 より診断を確固たるものにするには、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。また、尿路奇形を合併することも多いため、尿路系の精査も同時に行うこともあります。
 小児科、泌尿器科、小児外科の医師による治療では、戸籍上の性として育てていく性を決めることが最も大事です。一般的には、染色体や精巣によって将来の性を決めるより、現在の外性器の状態、将来の生活、両親などの希望を考慮して、彼我の身体的な比較ができるようになる前の乳幼児の内に、男性か女性かを決めます。
 選択した性に合わせて、男性として生きていく決定をした場合には陰茎形成術を、女性として生きていく決定をした場合には腟(ちつ)形成術を行い、性腺である精巣の摘出、陰嚢の切除も行います。また、選択した性に応じた性ホルモンの補充療法も必要に応じて行います。
 陰茎欠損症は遺伝的には明らかに男性を示すわけであり、将来の妊孕(にんよう)性を考えれば男性を選択するのが理想ですが、男児として養育した場合、不完全な陰茎形成術による陰茎を持った状態で発育することによる社会的影響、心理面、精神面での障害が生じます。また、正常な性行為は不可能であり、実際に陰茎形成術を施行して成長した後に、重篤な精神障害を生じることもあります。
 一方、女性を選択した場合、将来の妊娠、出産は不可能であるものの、両側の精巣摘出術の後に腸管を用いた膣形成術と性ホルモンの補充療法を行うことで、社会的、心理的負担は男児として養育した場合よりはるかに少なく、現時点においては女児として養育することを選択すべきという意見が多数を占めており、女性型への処置がされる場合が多く認められます。




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■用語 陰部臭汗症 [用語(い)]





[バー]陰毛部分から腋臭と同じような特有の臭いが発生する状態
 陰部臭汗症とは、腋(わき)の下から発生する腋臭(わきが)と同じような不快な臭(にお)いが、陰部から発生する状態を指す症状。外陰部臭症、すそ腋臭、下(しも)腋臭、トベラと呼ばれることもあります。
 腋の下、陰部、臍(へそ)の周囲、乳輪などには、アポクリン汗腺(かんせん)がたくさん分布しています。また、瞼(まぶた)、鼻、外耳道、肛門(こうもん)周囲などにも、分布しています。
 このアポクリン汗腺は、性ホルモンの影響を受けているため、思春期ごろから発汗が盛んになります。アポクリン汗腺から分泌された直後の汗には臭いはありませんが、汗をかいたままほうっておくと、汗に含まれる脂肪や尿素、アンモニアなどの成分が皮脂腺から分泌される脂肪酸と混じり合い、皮膚の表面についている細菌によって分解されることにより、刺激のある特有な臭いを発するようになります。
 ちなみに、人が一生を通じて出す汗のほとんどは、アポクリン汗腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン汗腺から出る水分を主成分とする分泌物で、アポクリン汗腺からの分泌物とは異なります。このエクリン汗腺からの分泌物そのものには、ほとんど臭いはありません。しかし、エクリン汗腺も、アポクリン汗腺の臭いの発散にかかわっています。
 部位に限らず、臭汗症(腋臭)は疾患ではなく優性遺伝で起こることが多い体質的なものです。両親ともに臭汗症だと、子供が臭汗症になる確率は75パーセント以上、片方の親が臭汗症でも50パーセント以上の確率で遺伝するといわれています。それは、臭いの原因となるアポクリン汗腺の数も遺伝するためです。
 アポクリン汗腺は全身の至る部位に分布しているため、腋の下なら腋の下、陰部なら陰部と、どれか一部位で腋臭の臭いが強くなることもありますが、合併して起こることも多い傾向にあります。そのため、腋の下から発生する臭汗症(腋臭、腋臭〔えきしゅう〕症)で悩んでいる人は、陰部から発生する陰部臭汗症(すそ腋臭)も併発していることが多い傾向にあります。
 性別の特徴としては、男性よりも女性に多く陰部臭汗症がみられる傾向にあります。女性の場合、特に生理中に陰部臭汗症が強くなることがあります。
 また、性行為の際にも強くなることがあります。性的な興奮によって、アポクリン汗腺が刺激されるためで、特に性行為の後、陰部臭汗症の臭いがきつくなることが多いようです。
 世界的に臭汗症(腋臭)体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。
 このように日本人では臭汗症体質者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の陰部臭汗症の症状が気になって仕事や勉強に集中できない、恋人がつくれない、人に近付くのが怖いなどの悩みを持つ女性も、少なからずいるとされています。
 陰部臭汗症に気付いたら、陰部を清潔に保つことが大切です。汗をかいた後はシャワーや入浴で汗をよく洗い流し、清潔な下着にこまめに取り替えます。衣服や下着の上から使えるパウダースプレーや全身に使えるローションなどのデオドラント製品の外用も、ある程度効果があります。また、陰毛があると汗が付着して細菌が繁殖しやすくなるので、陰毛を切ったり脱毛すると、臭いを減らす効果があります。
 ニンニクや唐辛子などの香辛料やアルコールなども、発汗を促すことで臭いの原因になります。肉類や卵、乳製品といった動物性蛋白(たんぱく)質と同様、摂取を控えることで臭いの軽減につながります。
 セルフケアを行っても、陰部臭汗症の臭いが改善されない場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科を受診して相談することを考えてみてもよいのではないかと思われます。
[バー]陰部臭汗症の治療
 皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療としては、ビューホット治療、電気凝固法、ボトックス治療、手術療法などがあります。
 ビューホット治療は、局所麻酔や無痛麻酔を行った後、陰部に細い針から出る高周波を当てて、アポクリン汗腺、エクリン汗腺を破壊することで、陰部臭汗症の臭いを抑えるものです。通常の範囲であれば、20~30分程度で終わります。範囲が広い場合は、60分くらいかかることもあります。
 手術後は皮膚が少し赤くなる程度で、手術部の固定をする必要がないため、日常生活に制限がありません。1回で陰部臭汗症が治るというメリットがあり、手術の翌日からシャワーを浴びることもできます。
 電気凝固法は、局所麻酔の後、陰毛の毛根に沿って、針を挿入し、針に電気を流すことで、毛根周囲のアポクリン汗腺を破壊するものです。治療時間は20~30分程度で、通常3カ月おきに2回程度受けることで、効果が現れます。手術と比べ痛みはほとんどなく、治療後の日常生活にも支障はほとんどありません。ただし、治療によって陰毛は薄くなります。メリットは、効果が半永久的な点です。
 ボトックス治療は、ボトックスという薬剤を注射して、神経伝達物質のアセチルコリンをブロックします。これにより、陰部の汗を抑えることが可能になります。1回の治療ですぐに効果が現れますが、5~6カ月ほどで効き目はなくなるため、陰部臭汗症が完全に治るわけではありません。また、比較的軽度の陰部臭汗症には効果が出やすいですが、かなり臭いがきつい場合は抑えられないこともあります。
 臭いを抑える効果を強力にするため、ボトックス治療と一緒に、陰部のV(ビキニ)ライン、I(陰部の両側)ラインの脱毛を行うこともあります。陰毛の根元に細菌が増殖して臭いが発生するので、陰毛を少なくして細菌が増殖する環境をなくすことで、臭いのもとを絶つものです。
 手術療法には、皮下組織削除法と超音波吸引法があります。
 皮下組織削除法は、皮膚を切開して、臭いの根本であるアポクリン汗腺を切除する方法です。皮膚を数センチ切開した後、専用のローラーを皮膚表面に転がして、皮膚の裏側に粒状に並んでいるアポクリン汗腺をカミソリのような器具で切除します。手術後は、1週間ほど患部を固定します。効果が高いだけでなく、傷口が小さくすむのもメリットとされていますが、抜糸が終わるまでの数週間ほど入浴はできません。
 超音波吸引法は、陰毛が生えている一番上の左右に、5ミリほど切り込みを入れ、そこから超音波メスを挿入して動かしていきます。超音波により発生した熱でアポクリン汗腺を破壊し、吸引します。
 せっかく手術をしてもアポクリン汗腺が取り切れなかったり、皮膚にダメージを与えてしまうことがあることから、手術を勧めなかったり、行わない医師も多いようです。




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