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■用語 HTLVー1関連脊髄症(HAM) [用語(A〜Z、数字)]





[足]両足のまひによる歩行障害が起こり、ゆっくりと進行
 HTLVー1関連脊髄(せきずい)症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)とは、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(Human T Lymphotropic Virus type 1:HTLVー1)の白血球(リンパ球)への感染によって、両足の筋肉が徐々にまひしていく慢性進行性の脊髄疾患。ヒトTリンパ球向性ウイルス1型感染に関連する疾患群の一つとして、1986年に鹿児島大が初めて報告しました。
 ヒトTリンパ球向性ウイルス1型を保持するキャリアの大多数は生涯にわたって、このHTLVー1関連脊髄症や成人T細胞白血病(ATL)などを発症しないまま健康に過ごし、ごく一部の人が発症します。
 1998年の全国調査では、日本でのヒトTリンパ球向性ウイルス1型のキャリアは全国に約120万人いるとされましたが、HTLVー1関連脊髄症の発症者は約1500人と確認されました。現在、年間発症率はキャリア10万人当たり3人と極めて低くなっています。
 発症者は全国的に分布し、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染者の多い九州、四国、沖縄に多くみられます。東京や大阪など人口の集中する大都市圏でも、頻度的には少ないものの相当数の発症者が見いだされています。
 世界的にみると、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型キャリア、成人T細胞白血病の分布と一致して、カリブ海沿岸諸国、南アメリカ、アフリカ、南インド、イラン内陸部などに発症者の集積が確認されています。それらの地域からの移民を介して、ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国など、世界的に発症者の存在が報告されています。
 ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染経路としては、母乳を介する母子間垂直感染と、輸血、性交渉による水平感染が知られていて、出産時や母胎内での感染もあります。輸血では、感染リンパ球を含んだ輸血により感染し、血漿(けっしょう)成分輸血、血液製剤では感染しません。
 なお、日本では現在、献血に際して抗体スクリーニングが行われており、輸血後の発症はなくなりました。2008年には、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の対象に追加されています。
 発症は中年以降の成人に多くみられますが、10歳代、あるいはそれ以前の発症と考えられる例もあります。男女比は1:2・3と女性に多く、男性に多い成人T細胞白血病と対照的です。また、輸血後数週間で発症した例もあり、成人T細胞白血病が感染後長期のキャリア状態を経て発症するのとは異なります。
 一義的な原因は、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染です。発症するメカニズムは、ウイルスに感染したTリンパ球が脊髄に浸潤し、その場でウイルス抗原を発現することにより、感染Tリンパ球を排除しようとするウイルス特異的免疫応答が生じ、その炎症反応に巻き込まれて周囲の脊髄組織が傷害されていると考えられています。感染者のごく一部にのみ発症するメカニズムはわかっていませんが、発症した人は体内のウイルス量が多いとされています。
 基本的な症状は、慢性進行性の両足のまひで、痛みやしびれ、筋力の低下によって歩行障害を示します。初期の歩行障害は、足が棒のように突っ張って、ひきづりながら歩くため、足が内側を向いてしまい、靴の外側が擦れてきます。次第に突っ張りが強くなると、足を上げるのが困難となり、手すり歩行、車椅子移動になります。
 同時に、自律神経症状は高率にみられ、特に、排尿困難、頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害は初期より多くみられます。その他、進行例では皮膚乾燥、多くは汗をかきにくい発汗障害、起立性低血圧、インポテンツなども認められます。これらの症状はいずれも、脊髄の傷害を示唆するものであり、HTLVー1関連脊髄症の中核症状となっています。
 それに加え、手指振戦、運動失調、眼球運動障害、あるいは軽度の認知症の症状を示し、病巣の広がりが想定される例もあります。
[足]HTLVー1関連脊髄症の検査と診断と治療
 HTLVー1関連脊髄症では、神経内科を受診することが重要で、医師の診察では極めて特徴的な所見の組み合わせがみられます。血液検査、腰椎穿刺(ようついせんし)で髄液検査を受け、血清抗HTLVー1抗体陽性、髄液抗HTLVー1抗体陽性を認めることが、診断の確定に必要です。また、類似の症状を示す他の疾患を除外するために、脊柱のレントゲン撮影やMRI検査が行われます。
 治療においては、病態に対応した治療が行われます。脊髄の炎症の活動性がほとんどないと考えられる例では、足の突っ張りや排尿障害などに対する対症療法や、継続的なリハビリテーションのみでも有効です。筋弛緩(しかん)剤の使用や、腰や脊柱の筋力増強、アキレス腱の伸張により、歩行の改善が得られます。
 排尿障害に対しては、尿道口からカテーテルを膀胱(ぼうこう)に挿入して、人工的に排尿させる導尿という方法により、外出への不安解消や夜間頻尿による不眠の改善など、日常生活動作(ADL)の改善が期待されます。
 明らかな症状の進行がみられ、脊髄の炎症の活動期と判断される例では、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の増殖を抑制する抗ウイルス療法が最も理にかなった治療法といえます。しかし、残念ながらウイルスの体内での増殖を抑制する薬剤は、これまでに見付かっていません。他のいくつかの薬剤には、症状を軽減したり進行を遅らせる効果があることが報告されています。
 副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の内服により、約7割の発症者で何らかの治療効果がみられていますが、むやみに大量投与や長期間継続することは避けられます。副作用、特に高齢者女性の骨粗鬆(こつそしょう)症による骨折、感染症の誘発、糖尿病の誘発には、十分注意が必要とされます。内服の中止により、しばしば再燃がみられています。
 また、HTLVー1関連脊髄症に対して唯一医療保険適応となっているインターフェロンα剤も用いられ、ウイルス量の減少、免疫異常の改善がみられていますが、やはり、うつ症状や肝障害、白血球減少などの副作用には、十分な注意が必要とされます。
 うつ症状や発熱による長期間の活動性低下は、運動機能の低下につながります。通常は徐々にまひしていく慢性進行性ですが、進行が早く数週間で歩行不能になる例もみられます。高齢での発症で進行度が早い傾向があり、重症例では両下肢の完全まひ、体の筋力低下による座位障害で寝たきりとなります。
 一方で、運動障害が軽度のまま、長期に渡り症状の進行がほとんどみられない発症者も多くみられます。両腕の完全まひ、飲み下しや発声障害などを来す例はほとんどなく、基本的に生命予後は良好。
 感染予防として、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型キャリアの妊婦の場合、産婦人科医と相談して、母乳を3カ月限定にするか、人工乳にします。血液を感染経路とするため、血の付いた歯ブラシなどは共用しないことです。




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