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■市販薬がありながら、病院処方される医薬品が5000億円 医療費膨張の一因に [健康ダイジェスト]




  
 湿布薬や鼻炎薬などの市販薬があるのに、利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が5000億円を超すことが、明らかになりました。処方薬は自己負担が原則3割と安いからですが、残りは税金や保険料で賄います。一律に保険を使う制度を改め、代えが利かない新薬に財源を振り向ける必要があります。
 2016年度の医療費は42兆円で、うち薬の費用は10兆円。公定価格(薬価)が3349万円の白血病治療薬「キムリア」が今年5月に保険適用となり、今後も高価な薬が相次ぐ見通し。症状が軽い人が進んで市販薬を利用すれば、そのぶん保険を使う費用を抑えられ、医療費抑制につながります。
 もともとは医師の処方が必要だったものの副作用の心配が少ないとして、一般用で認めた市販薬を「スイッチOTC」と呼び、これ以外にうがい薬や保湿剤など古くから市販薬と処方薬の両方があったものもあります。
 処方薬に頼る人が多いのは、自己負担が軽いからです。今年6月中旬の段階で、ある湿布薬を通販サイトで買うと598円ですが、病院で同量をもらうと3割負担は105円。アトピー性皮膚炎に使う薬を肌荒れを防ぐ保湿剤として使う人もおり、その薬は市販の4分の1以下の負担で手に入るため不必要な受診が相次ぎました。
 厚生労働省が2014年度から公表している診療報酬明細書(レセプト)データを活用して、市販薬と同じ成分を含む医療用医薬品の処方額を調べたところ、最新の2016年度は5469億円でした。金額が最大だったのは主に湿布薬に使われる成分の702億円、2位はアトピー性皮膚炎や肌荒れに使う保湿剤成分の591億円で、鼻炎薬も上位でした。
 集計方法を比較できる2015年度からは5%減ったものの、これは診療報酬改定で薬価が下がったことが一因。同じ薬価で比べると、2016年度は2%増えた計算となり、市販薬への切り替えが進んでいません。
 アメリカの医薬品調査会社IQVIAによると、がん免疫薬「オプジーボ」の2018年度の国内売上高(薬価ベース)は1014億円でした。仮に代替可能な処方薬を市販薬にすべて転換すれば、オプジーボ級の高額薬を5種類ぶんカバーできる計算になります。
 市販薬の承認ペースも鈍く、日本OTC医薬品協会(東京都千代田区)は海外を参考に120種類の成分を市販できるよう国に求めていますが、現在は86種で2017年の市販薬出荷額は約6500億円でした。普及を促すため、市販薬の購入費の一部を控除する税優遇が2017年に始まりましたが、2018年の利用者は2万6000人と当初見込みの100分の1にとどまっています。
 市販の可否を決める国の検討会メンバーは、医師が過半を占めています。調査会社の富士経済(東京都中央区)で医療に詳しい小倉敏雄主任は、「市販品が増えれば病院にくる人が減り、病院経営に響きかねない。あまり広めたくないのが医者の本音」と指摘しています。病院に来てもらえば、検査や処置、処方などで幅広く診療報酬を得られるからです。製薬会社などの国への市販化要望は2018年度に3件と、2016年度の18件から急減しました。
 法政大学の小黒一正教授は、「すべての医薬品を一律で保険適用する仕組みを維持するのは難しい。使われ方に応じて自己負担を見直すべきだ」と訴えています。
 参考になるのはフランスで、薬の重要性に応じて自己負担比率をゼロから100%まで5段階に分けています。抗がん剤など代えの利かない薬は全額を公費で賄い、市販品がある薬の自己負担を重くしています。
 医療費の膨張にブレーキをかけるため、国や自治体が必要性の薄い通院を繰り返す人に対して、自制を促すような取り組みも求められます。

 2019年7月13日(土)
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