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■用語 夜間低血糖 [用語(や)]



[夜]睡眠中に現れる低血糖
 夜間低血糖とは、血液に含まれる糖(ブドウ糖)が少なくなりすぎる低血糖が睡眠中に現れる状態。
 血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。糖尿病でない人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されています。しかし、糖尿病ではこの糖の量を一定に維持することができません。食事から取り入れた糖を体や脳のエネルギーとして消費するという需要と供給のバランスが崩れ、血液中の糖が増えすぎると高血糖、逆に薬が効きすぎるなどして血液中の糖が少なくなりすぎると低血糖になります。
 一般に、血糖値が70mg/dL以下になると、人の体は血糖値を上げようとします。また、血糖値が50mg/dL未満になると、脳などの中枢神経が糖不足、すなわちエネルギー不足の状態になります。その時に現れる特有の症状を低血糖症状といいます。
 人によっては、血糖値が70mg/dL以下にならない場合でも、糖尿病の治療などで血糖値を下げるインスリンの過剰な状態になった時に血糖値が急激に大きく下がることで、低血糖症状が現れることがあります。逆に、血糖値が70mg/dL以下になった場合でも、低血糖症状が現れない人もいます。
 睡眠中に血糖値が低下する夜間低血糖が起こると、血糖値を回復させるため、アドレナリンやコルチゾールなどの興奮にかかわるホルモンが分泌され、交感神経が優位になります。そのため、寝汗や歯ぎしり、悪夢にうなされる、熟睡感がない、寝ても疲れが取れない、朝起きた時に頭痛や肩凝りがある、といった症状が現れます。つまり、夜間低血糖と同時に、眠りの質を低下させる睡眠障害も起きてしまうということです。
 夜間低血糖は夜中の2時から3時ころに起きやすく、いったん、アドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが分泌されると、肝臓からブドウ糖が放出されるため、明け方以降に血糖値の上昇が起こり、半日程度は血糖値が下がりにくくなります。そのため、糖尿病の薬が十分効かなくなり、一日の血糖コントロールに悪影響を及ぼすことも少なくありません。
 夜間低血糖が起きると、多くの場合は不快な症状により目が覚め、自発的に夜間低血糖に気が付きます。ただし、眠りが深い場合や、急激に血糖値が下がって意識を消失した場合には、本人が気付かないこともあります。
 現れる症状には個人差がありますが、血糖値が低下すれば低下するほど症状は重くなり、血糖値が50mg/dL程度になると、中枢神経症状が現れ、意識障害を示すことがあります。そして、血糖値が30mg/dLよりも低くなると、重症低血糖に陥って意識レベルが低下し、意識消失、けいれん、昏睡(こんすい)など危険な状態になってしまうことがあります。これは大変深刻な状態で、死に至ることもあります。
 夜間低血糖になる原因は、いくつか考えられます。食事の量や炭水化物の不足、糖尿病の薬を服用した後の食事時間の遅れ、寝る前の運動の量や時間の多すぎ、空腹での運動、インスリン注射や経口血糖降下剤の量の多すぎ、飲酒、入浴など。
 夜間低血糖になった時は、できるだけ早い段階で速やかに対応をしなければなりません。目が覚めて意識があり、経口摂取が可能な時は、砂糖15グラムから20グラムを飲みます。糖分を含む缶ジュース、缶コーヒーでも構いません。10分から15分で回復しない時は、再度同量を摂取します。
 α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ等)、ボグリボース(商品名:ベイスン等)、ミグリトール(商品名:セイブル)など、消化管の二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素の働きを抑えることで血糖の急激な上昇を抑える経口血糖降下剤を飲んでいて夜間低血糖を起こした時には、砂糖を飲んでもすぐに吸収されないため、回復に時間がかかることがあります。
 そのため、夜間低血糖時にはブドウ糖、またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水を飲むようにします。
 深刻な低血糖で意識障害を来した時には、自身でブドウ糖を飲み込むのが難しいことがあり、家族や周囲の協力が必要になります。その場合は、無理にブドウ糖を飲ませると、誤嚥(ごえん)や窒息の原因になります。周囲の人は、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間に塗り付けます。
 医療機関の指導を受けた上で、周囲の人が血糖値を上げるためのグルカゴンという注射を行うこともあります。肝臓のグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を放出する作用があるグルカゴン注射で回復した後は、軽く経口摂取しておくことが必要です。なお、アルコールの飲みすぎで低血糖になった時は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇しており、グルカゴン注射は効きません。
 救急処置でも回復しない時は、すぐに救急車を呼び、医療機関へ搬送しましょう。
 意識がはっきりしない状態にまでなった低血糖は、一時的に血糖値が改善してもその後にまた血糖値が下がり、同じ症状が現れる可能性が高くなります。低血糖が続く場合も、必ず内科、内分泌代謝内科などを受診し、診察を受けましょう。
 糖尿病でない健康な人でも、夜間低血糖が起こることがあります。食事量が十分に取れていなかった時、食事時間が遅れて空腹が続いた時、空腹のまま激しい運動や長時間の運動を行った時、食事を取らない状態でアルコールを過剰に摂取した時などに血糖値のバランスが崩れると、夜間低血糖を起こしやすくなります。
 また、夜間低血糖は、1日を通して血糖値が乱高下している人に多く見受けられます。特に夕食後に血糖値が急激に上がると、それに対応すべくインスリンが過剰に分泌される結果、血糖値が下がりすぎて夜間低血糖を引き起こすことがあります。
 ただし、健康な人の場合、夜間低血糖になっても、自然に回復してしまい気が付かないことがあります。
[夜]夜間低血糖の対策と予防
 夜間低血糖に関しては、予防に優る治療はありません。食事を規則正しく摂取する、食前の過激な運動は避ける、運動前に補食するなどの注意が必要です。
 また、自身が糖尿病治療のために使用している薬が、低血糖を起こしやすいか否かを把握することも、必要です。一般に低血糖を起こしやすい糖尿病の治療薬は、経口血糖降下剤のスルホニル尿素薬(SU薬)とインスリンです。経口血糖降下剤のビグアナイド薬(BG薬)、α-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ボグリボース、ミグリトールなど)、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)といった薬でも起こることがあります。インスリン注射は、正しい手技を身に着けておくことが重要です。
 軽い低血糖症状が現れた時は、できるだけ早い段階で速やかに対処して、重症低血糖を防ぎます。血糖自己測定器で夜間にも血糖を測り、血糖が下がっていれば症状がなくても早めに対処することが必要です。




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■用語 薬剤性低血糖 [用語(や)]



[レストラン]糖尿病の薬などの服用により、血液に含まれる糖が少なくなりすぎて症状が現れる状態
 薬剤性低血糖とは、糖尿病の薬などの服用が原因で、血液に含まれる糖(ブドウ糖)が少なくなりすぎて特有の症状が現れる状態。
 経口血糖降下剤やインスリン注射などの薬物療法を必要とする糖尿病患者では、それらの薬剤を服用している限り、日常生活において低血糖が現れる可能性は常に潜んでいます。また、糖尿病治療薬以外の薬剤の服用による副作用として、薬剤性低血糖の症状が現れることもあります。
 血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。糖尿病でない人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されています。しかし、糖尿病ではこの糖の量を一定に維持することができません。食事から取り入れた糖を体や脳のエネルギーとして消費するという需要と供給のバランスが崩れ、血液中の糖が増えすぎると高血糖、逆に薬が効きすぎるなどして血液中の糖が少なくなりすぎると低血糖になります。
 一般に、血糖値が70mg/dL以下になると、人の体は血糖値を上げようとします。また、血糖値が50mg/dL未満になると、脳などの中枢神経が糖不足、すなわちエネルギー不足の状態になります。その時に現れる特有の症状を低血糖症状といいます。
 人によっては、血糖値が70mg/dL以下にならない場合でも、治療などによって血糖値を下げるインスリンの過剰な状態になった時に血糖値が急激に大きく下がることで、低血糖症状が現れることがあります。逆に、血糖値が70mg/dL以下になった場合でも、低血糖症状が現れない人もいます。
 低血糖になる原因は、いくつか考えられます。経口血糖降下剤やインスリン注射の量の多すぎ、糖尿病の薬を服用した後の食事時間の遅れのほか、食事の量や炭水化物の不足、運動の量や時間の多すぎ、空腹での運動、飲酒、入浴など。
 一般に低血糖を起こしやすい糖尿病の治療薬は、経口血糖降下剤のスルホニル尿素薬(SU薬)とインスリンです。経口血糖降下剤のビグアナイド薬(BG薬)、α-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ボグリボース、ミグリトールなど)、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)といった薬でも起こることがあります。インスリン注射は、正しい手技を身に着けておくことが重要です。
 糖尿病治療薬以外で低血糖を起こしやすい薬剤は、合成抗菌剤(ニューキノロン系、ST合剤)、不整脈用剤(ジソピラミド、シベンゾリンなど)、脳循環代謝改善剤(ホパンテン酸カルシウム)などです。
 低血糖の時には、その値に応じて、体にさまざまな低血糖症状が現れます。集中できなかったり、いつもしていることに時間がかかってしまう場合は、低血糖の可能性もあります。
 睡眠中に低血糖が起きていても、気付かない場合が多々あります。日中に起きる低血糖と症状や原因が異なり、寝る前の運動や食事、入浴などのちょっとした行動が原因になることもあります。さらに、夜間低血糖を起こすと、その反動で翌朝、高血糖になることがあり、その高血糖が尾を引くと一日の血糖コントロールに悪影響を及ぼすことも少なくありません。
 血糖値が約70mg/dL以下になると、交感神経症状が現れ、異常な空腹感、発汗、手の震え、動悸(どうき)などの症状が出てきます。さらに血糖値が下がり50mg/dL程度になると、中枢神経症状が現れます。
 ただし、ふだんから低血糖がよく起こる人や、低血糖症状の自覚が少ない人は、空腹感、発汗などの交感神経症状が現れないまま、無自覚性低血糖になることがあります。無自覚性低血糖の状況になると、血糖値を測ると60mg/dL程度まで低下していることに気付いたり、血糖値が50mg/dLより低くなって、突然さらに重い中枢神経症状が現れ、意識障害を示すことがあります。
 そして、血糖値が30mg/dLよりも低くなると、重症低血糖に陥って意識レベルが低下し、昏睡(こんすい)など意識のない危険な状態になってしまうことがあります。これは大変深刻な状態で、死に至ることもあります。
 低血糖になった時は、できるだけ早い段階で速やかに対応をしなければなりません。意識があり経口摂取が可能な時は、砂糖15グラムから20グラムを飲みます。糖分を含む缶ジュース、缶コーヒーでも構いません。10分から15分で回復しない時は、再度同量を摂取します。
 α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ等)、ボグリボース(商品名:ベイスン等)、ミグリトール(商品名:セイブル)など、消化管の二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素の働きを抑えることで血糖の急激な上昇を抑える糖尿病の薬を飲んでいて低血糖を起こした時には、砂糖を飲んでもすぐに吸収されないため、回復に時間がかかることがあります。
 そのため、低血糖時にはブドウ糖、またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水を飲むようにします。
 深刻な低血糖で意識障害を来した時には、自身でブドウ糖を飲み込むのが難しいことがあり、家族や周囲の協力が必要になります。その場合は、無理にブドウ糖を飲ませると、誤嚥(ごえん)や窒息の原因になります。周囲の人は、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間に塗り付けます。
 医療機関の指導を受けた上で、周囲の人が血糖値を上げるためのグルカゴンという注射を行うこともあります。肝臓のグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を放出する作用があるグルカゴン注射で回復した後は、軽く経口摂取しておくことが必要です。なお、アルコールの飲みすぎで低血糖になった時は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇しており、グルカゴン注射は効きません。
 救急処置でも回復しない時は、すぐに救急車を呼び、医療機関へ搬送しましょう。
 意識がはっきりしない状態にまでなった低血糖は、一時的に血糖値が改善してもその後にまた血糖値が下がり、同じ症状が現れる可能性が高くなります。低血糖が続く場合も、必ず医療機関で診察を受けましょう。
[レストラン]薬剤性低血糖の検査と診断と治療
 内科、内分泌代謝内科などの医師による診断では、低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合、血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状がある場合に、低血糖と判断します。
 意識障害で重症低血糖の患者が搬送されてきた場合には直ちに緊急の処置を行いますが、それでも可能であれば血液検査を行い、血糖値を確認します。
 内科、内分泌代謝内科などの医師による治療では、意識が保持され経口摂取が可能な場合には、ブドウ糖10〜20グラムを経口摂取します。低血糖昏睡を起こし経口摂取が不可能な場合には、まず50%のブドウ糖液 20〜40 mlを静注し、その後5%のブドウ糖を点滴し、血糖値を100~200 mg/dlに保ちます。特にスルホニル尿素薬(SU薬)を内服している場合には、ブドウ糖液の静注で血糖が上昇したからといって安心せず、数時間後に再発することがあるため、入院の上で十分な管理を行います。
 低血糖に関しては、予防に優る治療はありません。食事を規則正しく摂取する、食前の過激な運動は避ける、運動前に補食するなどの注意が必要です。
 また、自身が糖尿病治療のために使用している薬、あるいは糖尿病治療薬以外の抗菌薬、抗不整脈薬などの薬剤が、低血糖を起こしやすいか否かを把握することも、必要です。
 軽い低血糖症状が現れた時は、できるだけ早い段階で速やかに対処して、重症低血糖を防ぎます。無自覚低血糖を起こすようなケースでは、こまめに血糖を自己測定し、血糖が下がっていれば症状がなくても早めに対処することが必要です。
 低血糖を起こした時、いつ、どこにいてもすぐに対処できるように、ペットシュガーやブドウ糖ゼリーなどを常時携帯しておきます。特に運動療法で外出するような時は忘れずに持っていきます。
 もしもの時に備えて、糖尿病患者であることを示す糖尿病手帳や、携帯用の糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)を常に携行しておけば、昏睡で医療機関に搬送された時でもすぐに適切な処置が受けられます。




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■用語 薬物乱用頭痛 [用語(や)]

[病院]薬物乱用頭痛とは、頭痛薬を服用し続けているうちに服用回数や量が増え、それが原因となって起こる頭痛のこと。薬剤誘発頭痛ともいいます。
 原因は、頭痛薬の常用で脳の神経が痛みに対して過敏になったり、血管が拡張しすぎたりすることで、頭痛剤を飲んでも効かなかったり、頭痛剤を飲むことでかえって頭痛を悪化させたりしてしまいます。
 薬の効果が切れると痛みが増強するため、さらに薬を飲むという悪循環に陥りやすく、市販薬だけでなく医師が処方する薬によっても起こり得ます。頭痛を起こしやすい薬は、トリプタンやエルゴタミン製剤などの片頭痛特効薬や一般の鎮痛薬です。
 医師による治療では、まず原因となる頭痛薬を中止し、中止した後に起こる頭痛に対応します。予防のため、頭痛薬の服用は月10回以内に抑える必要があります。




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■用語 野球肘 [用語(や)]





[野球]投球動作による上腕の使い過ぎで、利き腕の肘に炎症や痛みが起こる関節障害の総称
 野球肘(ひじ)とは、投球動作による腕や手首の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘に炎症や痛みが起こる関節障害の総称。
 この野球肘は、利き腕の上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じる傾向にあり、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライ、ウエートリフティングなどでも生じます。
 野球肘は、内側(ないそく)型野球肘、外側(がいそく)型野球肘、後方型野球肘に大別されます。
 内側型野球肘は、小学生から中学生の少年期では骨の損傷が多いのに対し、成人以降では靭帯(じんたい)の損傷が関与することが多くなります。外側型野球肘は、少年期に多くて後遺障害を残しやすく、早期発見が重要になります。後方型野球肘も、少年期には骨の損傷が多いのですが、成人期以降では尺骨(しゃくこつ)神経まひを伴うこともあります。
[野球]内側型野球肘は手首や腕の使い過ぎで、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる障害
 内側型野球肘は、投球動作による手首や腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる関節障害。
 正式な医学的名称は上腕骨内側上顆(じょうか)炎で、一般にはリトルリーガー肘、リトルリーガーエルボー、ベースボール肘、ベースボールエルボーとも呼ばれます。
 利き腕の上腕骨は肩から肘にかけての大きな骨で、その肘の部位には親指側と小指側に2つの突起部があり、手のひらを天井に向けた時に肘の親指側の突起部が外側上顆、肘の小指側の突起部が内側上顆です。外側上顆には手の甲を顔に向ける回外筋群や、指や手首を伸ばす伸筋群が付いており、内側上顆には手のひらを顔の方へ向ける回内筋群や、指や手首を手のひら側に曲げる屈筋群が付いています。
 内側型野球肘は、手首を過剰な力で手のひら側に曲げる投球動作によって、上腕骨内側上顆に慢性的な衝撃が繰り返し加わり、回内筋群や屈筋群に微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。
 内側型野球肘は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られています。特に、成長期に当たる少年野球の投手がボールを投げすぎると生じやすいことが知られていますが、中年以降のテニス愛好家にフォアハンドストロークの繰り返しで生じやすいためにフォアハンドテニス肘、ゴルフの一部のスイングをやり過ぎると生じやすいためにゴルフ肘、重いスーツケースを持ち運び過ぎると生じやすいためにでスーツケース肘とも呼ばれ、スポーツや手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。
 内側型野球肘を起こす要因としては、肩や手の筋肉が弱い、投球動作をやり過ぎる、投球フォームに無理がある、テニスでサーブを強打したりオーバーハンドサーブやトップスピンサーブをする、濡れて重くなったボールを打つ、ラケットが重すぎるかグリップが細すぎる、ラケットのガットの張りが強すぎるなどが挙げられます。
 症状としては、野球では投球のリリースのたびに、テニスではフォアハンドストロークのたびに、ゴルフでは一部のスイングのたびに、肘の内側に疼痛(とうつう)が現れます。ズキズキする痛みがあるのに運動を続けると、筋肉を骨に結び付けている腱(けん)が上腕骨内側上顆からはがれてしまい、出血を起こすこともあります。
 また、野球やテニス、ゴルフ以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の内側から前腕の小指側にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。
[野球]外側型野球肘は野球のピッチャーに多く発症し、利き腕の肘の外側に炎症や痛みが起こる関節障害
 外側型野球肘は、投球動作による腕や手首の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の外側に炎症や痛みが起こる関節障害。
 外側型野球肘の代表的なものは、肘の外側にある上腕骨小頭の骨軟骨が壊死(えし)する肘離断性骨軟骨炎で、上腕骨小頭骨軟骨障害とも呼ばれます。
 特に、満9歳から12歳までの少年少女たちを対象とした野球組織であるリトルリーグに所属していたりする、小学校高学年から中学校低学年の野球のピッチャーなどが肘を酷使して発症します。ピッチャーに次いで多く発症するのは、キャッチャー。
 成長終了後の野球のピッチャーなどが肘を酷使して発症する外側型野球肘には、橈骨頭(とうこっとう)障害、尺骨神経まひがあります。橈骨頭障害は、肘から手首にかけての長い骨である橈骨と、肩から肘にかけての長い骨である上腕骨がつながっている部分、つまり肘頭(ちゅうとう)周囲に骨の出っ張りである骨棘(こつきょく)が生じ、関節の動きが悪くなったりする障害です。尺骨神経まひは、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる障害です。
 ここでは、小学校高学年から中学校低学年の野球のピッチャーなどが肘を酷使して発症する肘離断性骨軟骨炎について説明します。
 肘離断性骨軟骨炎は繰り返す投球動作における微小な外反ストレスの蓄積により、上腕骨小頭の骨軟骨、すなわち肘関節を形成する上腕骨の遠位端の外側部にある球状の部位に変性、壊死が生じます。症状として、肘関節を伸ばしたり、曲げたりする時に痛みが出たり、動きが悪くなったりします。この初期の段階では、投球動作を中止することのみで、自然治癒が促されることがあります。
 実際は、練習や試合での投球動作の終了後は速やかに痛みが消失するために、単なる使いすぎによる痛みと勘違いされることが多く見受けられます。
 放置して投球動作を続けると症状が進行し、壊死を起こした骨軟骨片が肘の関節面から遊離して関節内遊離体となり、関節の中をあちらこちらと移動することになります。
 この関節遊離体に最も特有な症状が、嵌頓(かんとん)症状。肘関節の運動の最中に、突然、遊離体が関節の透き間に挟まってしまい、激しい痛みを起こして関節の運動が不能となる状態です。何かの拍子に遊離体が外れれば、急速に痛みは治まりますが、嵌頓症状を繰り返していると、滑膜炎と呼ばれる関節内の炎症や変形性関節症を起こしやすくなります。しかし、遊離体があっても、嵌頓症状が必す起こるわけでもありません。
 そのほか、関節遊離体の症状として、関節の痛みや、だるさ、はれを感じたり、肘の曲げ伸ばしができなくなったり、関節に水がたまったりすることもあります。
 肘離断性骨軟骨炎が進行してしまうと、投球動作にかかわるスポーツが十分できなくなるどころか、遊離したことで生じた上腕骨小頭の骨軟骨の欠損は成人期以降も肘の変形性関節症を発症し、痛みが出たり、動きが悪くなったりする後遺障害を残しやすくなります。
 早期発見、早期治療を行う必要がある典型的な疾患が、肘離断性骨軟骨炎です。野球少年が投球時に肘の痛みを訴える場合は、早めに整形外科を受診することが勧められます。
[野球]後方型野球肘は少年期の野球のピッチャーに多く、腕の使い過ぎで肘の後方に炎症や痛みが起こる関節障害
 後方型野球肘は、投球動作による腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の後方に炎症や痛みが起こる関節障害。
 後方型野球肘は、小学生から中学生の野球少年に多くみられますが、成人以降の野球選手にもみられます。
 野球の投球動作では、ボールが手から離れ腕の動きが減速されるリリース期から、最後に腕を振り切るフォロースルー期にかけては肘が伸ばされるため、肘の後方に牽引(けんいん)力や張力が加わり、肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋が付着する肘頭は、少し上にある肘頭窩(か)と衝突するようなストレスを受けます。
 成長期の少年では、肘頭のすぐ下に、膨張することで骨が大きくなる成長軟骨の部分である骨端線があります。骨端線の部分は、骨の成長が終了すると均一で強固な骨になりますが、成長が終了する直前には逆に軟骨層の部分が薄くなっていて、外力に弱く、関節にかかるストレスを受けやすくなっています。
 そのため、投球動作の繰り返しにより、肘頭の成長軟骨の部分である骨端線に微小なストレスが蓄積すると、骨端線が損傷され、離開、剥離(はくり)を起こしたり、疲労骨折を起こし、後方型野球肘を生じます。
 症状としては、投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。肘の後ろの肘頭、時に肘頭窩に圧痛がみられることもあります。
 成長期の小中学生の後方型野球肘では骨の障害が多いのに対し、成人以降では肘頭周囲に骨の出っ張りである骨棘が生じ、関節の動きが悪くなったり、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が骨棘の圧迫で損傷されて、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、握力が落ちるなどの運動動障害が起こる尺骨神経まひを伴うこともあります。
 少年にみられる後方型野球肘の場合、初期の痛みは投球時のみで、すぐに症状がなくなるので軽くみられがちですが、発症初期に投球動作を休止しないと骨端線の閉鎖が遅れたりする状態になって骨の変化を来し、結果的に数カ月から数年の投球禁止を余儀なくされます。
 肘の痛みが3週間以上続いたり、肘の曲げ伸ばし角度が悪くなった際には、整形外科を受診することが必要です。
[野球]野球肘の検査と診断と治療
[野球]内側型野球肘の検査と診断と治療
 整形外科の医師による内側型野球肘の診断では、肘の内側に圧痛が認められます。また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘の内側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、内側型野球肘、すなわち上腕骨内側上顆炎と確定診断します。
 X線(レントゲン)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査も、診断に有効です。
 整形外科の医師による内側型野球肘の治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(エルボーバンド、テニスバンド)で押さえること。2つ目は、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤と局所麻酔剤を混合して痛い部分への注射を行うこと。
 同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。
 このような治療で、大部分の人が3〜6カ月ほどで治ると考えられています。障害が治癒したら、患部の筋肉と、手首や肩の筋肉を強化します。手術が必要となることはまれで、多くの場合、安静や投薬といった保存的治療で治ります。治癒を早める目的で、筋肉から瘢痕(はんこん)化した組織を切除するニルシュル法が行われることもあります。
 手指や前腕の筋肉は日常生活で非常によく使うため、安静がなかなか取れずに痛みが長引く場合もありますが、根気よく治療を続けることが大切です。治っていないのに野球やテニスなどの運動を続けると、内側側副靭帯(そくふくじんたい)の緩みや骨に付着する部分での断裂を起こし、靭帯を修復するための手術が必要になることもありますので、無茶は禁物です。
[野球]外側型野球肘の検査と診断と治療
 整形外科の医師による外側型野球肘の代表である肘離断性骨軟骨炎の診断では、問診をしたり、関節の動きを調べ、上腕骨小頭部の圧痛がある場合に、肘離断性骨軟骨炎を疑います。
 確定診断は、X線(レントゲン)検査により行います。病巣は、初期には骨の陰が薄くなった状態として、進行すると病巣部の骨軟骨片が上腕骨小頭から分離、遊離した状態として撮影されます。しかし、初期には病変を認識することが難しいこともあります。また、正面と側面からの肘関節2方向撮影法、肘関節を45度屈曲した位置で正面像を撮影する撮影法が有用です。
 そのほか、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査は、骨軟骨がはがれやすい状態であるかどうか確認するなど病態を調べるのに有効です。
 整形外科の医師による肘離断性骨軟骨炎の治療では、初期の場合、局所安静、投球禁止により病巣の修復、治癒が期待できます。しかし、実際には6カ月から1年間、場合によっては1年以上の長期にわたり投球動作を禁止することもあり、投球の再開により再発するケースもあります。
 従って、初期の場合であっても長期の投球禁止を望まないケースや、再発例では、手術を行うこともあります。
 進行した場合では、再び投球を可能にし、将来的な障害を残さないために、手術を行うことになります。具体的な手術としては、壊死した骨軟骨を切除し関節遊離体を取り除く方法を基本として、遊離しかけた骨軟骨片を再固定し、病巣部に新たな骨ができることを促す方法、遊離した骨軟骨片の再固定が困難な場合に、欠損した肘の関節面に体の他の部位から骨軟骨を移植し、関節面を形成する方法などがあります。
 手術後のリハビリテーション、投球再開の時期は病期、手術法により異なりますが、おおむね6カ月程度で全力投球が可能になります。
 肘離断性骨軟骨炎の発生の予防には、基本的には肘関節の使いすぎによるところが大きいため、練習日数と時間、投球数の制限が重要です。また、投球フォームにより肘に負担がかかりすぎるケースも多くあり、適切な筋力トレーニングと投球フォームの指導、正しいスケジュール決定も必要です。
[野球]後方型野球肘の検査と診断と治療
 整形外科の医師による後方型野球肘の診断では、問診をしたり、関節の動きを調べ、投球時の肘の痛み、肘後方の圧痛がある場合に後方型野球肘を疑います。
 X線(レントゲン)検査を行い、肘頭の骨変化、亀裂骨折、疲労骨折像を認めれば、後方型野球肘と確定します。
 整形外科の医師による後方型野球肘の治療では、主原因である投球動作を数週間禁止し、電気治療や、リハビリでのストレッチを行います。
 骨変化が認められる場合は、投球動作を3カ月以上禁止します。3カ月以上経過観察し、軟骨部分の骨癒合による修復傾向がみられない場合は、手術で遊離しかけた軟骨片を再固定します。 遊離骨片が肘の関節の透き間に挟まって、関節の運動が不能となっている場合は、手術で軟骨片を摘出します。




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